COMMENT

青木淳

建築家

ダンサーの指が、肩に、膝に添えられる瞬間の、鮮烈な感覚。それは、私に身体が返ってくる瞬間だった。そのときはじめて、ほぼ視覚と聴覚に頼った認知のなかで、身体を失っていたことを知るのだった。

阿部 一直

東京工芸大学 教授

総合芸術というジャンルが、もしあるとしたら、それは常に維持され、表出されていくものではなく、芸術的な未曾有のアイディアと突出した高濃度テクノロジーが融合する時点で、初めて生まれてくるものではなかろうか。予想のつかない爆発的な要素を秘め、成熟した文化の帰結からというより、時代の変換期における果敢な実験性が大きく機運している。(テクノトゥルギーにおいてのリヒャルト・ワーグナーもまた然りである。)
その意味で「border 2021」は、われわれの時代のまさに総合芸術の稀有な事例であり、驚くべき作品である。私見の感触では、「border 2021」とは、リアルもVRもARもパラレルワールドの一部ではないかという、感覚的な実感を持ち得た初めての知覚体験作品である。どこかに優位やオリジンがあるわけでなく、リアルも実はミラー・ワールド(あるいはスライディング・ワールドと呼ぶべきか)のある1頁であったのだ。改訂バージョンでは、さらに、非線形的なものが生まれてきて、今後の展開が、さらに期待される

稲見昌彦

東京大学 教授

タイトルをborderlessとした方が良いほどに物理世界と情報世界が融け合い、物理・情報界面の相互作用を示唆する音響が、眼前に広がる世界のリアリティを強化する。
自動制御された電動車いすに身を委ね、身体がシステムの一部となったところで、ふとダンサーに触れられ、自己と他者とのborderを認識する、そして床から伝わる演者の振動で対象と触れずに繋がる。つまり触覚こそが自己の界面を規定するとともに身体像を変容させることを意識させられる。
本作品は、物理と情報、自己と他者とのborderを、過剰ともいえる多感覚刺激で問いかけるものである。

大坪輝央

Planning Director, Editor

劇的に愉しい詩的体験。VRを身につけ、プログラムされたアート空間に迷い込むと、瞬時にevalaの音が聴覚を刺激する。しばらく視覚と聴覚の刺激に遊ぶうちに、自らの感覚は時間と記憶から自由になり、景色は、現実に見えているものを超え、都市となり、森となり、風になり、星々と戯れてゆく。そして、ダンサー達による触覚の目覚め! その瞬間、景色は自らの生への参与となり、内的なものと外的なもの、問いと共感、劇空間にいる他の体験者の存在とその意識をも自らのインサイトと対話を始めるかのよう。絶対的に詩的な体験でありながら、感覚をフル稼働させ、しかも愉しませてくれるエンターテインメント。

岡村靖幸

Rhizomatiks × ELEVENPLAYの作品の中でも
その現場に行った人でないと体感できない
感じる芸術border 2021(アップデートされている)

肉体、思想、テクノロジーが駆使され、
そして14世紀の織物のような
考えられない細かさで織り込まれてる計算されたダンス、テック
観て、観られて、覗いて、覗かれて、
知らないうち観客自身も作品の一部されてしまってる事に気づいた時の恐ろしさと
いけない場所にいるかのような怖さ、官能感。
言葉の説明がないので色々・・・・??・訝ったり不安になったり
そして女性性について考えさせられるという意味では
もしかしたら
思想的、政治的でもあるのかもしれません。

言葉も必要としない作品なので海外でも
絶賛されるのでは?
ただただ素晴らしいです。

川島 優志

ナイアンティック 副社長

ライゾマティクスが、Perfumeと重ねてきたデジタルと現実の融合の模索、MIKIKO さんが ELEVENPLAY と磨き上げてきたダンスパフォーマンスと演出の粋、長年の「積み」が結晶した、世界でもここでしか表出しない贅沢な湧水のような作品でした。現在実現できる Mixed Reality の極みと言える体験に感動しました。

國崎晋

RITTOR BASE director

VR/AR/MRを使った作品の多くは視覚情報に頼り過ぎで、聴覚から得られる音像とHMDが描く映像との不一致が体験の質を落としてしまっているのが残念であった。しかし「border 2021」は、MRによる視覚情報、ヘッドフォンから聴こえる音声、さらにはそれに被さって耳に到達する会場のPA音声が、鑑賞者の脳の中でまったく齟齬無く結実しており、これまで体験したことのない世界へと連れて行ってくれた。面白いのは単にバーチャルな空間に放り出されるわけではなく、途中、ダンサーが鑑賞者の足や肩をタッチすることで、空間内における自身の存在のリアリティを再確認させられること。パーソナルモビリティ「WHILL」により動きをコントロールされた鑑賞者は、その身体性を意識すると同時に自分が群舞の一部と化していることを意識し始めるのだ。そして、それを場内から鑑賞している次回の体験者がいて、さらにそれを遠隔地から配信で鑑賞している人たちがいる……と幾重にも張り巡らされたメタ構造に思い至ることで、作者たちの術中に見事にはまってしまうのである。

栗栖良依

SLOW LABEL ディレクター

リアルとバーチャルがボーダレス。後からパフォーマンスの様子を観たら、さらに驚きの連続でした。あんなことしてたなんて!こんなとこにいたなんて!
そして何より、私観測史上、最高難易度の車いすフォーメーションでした!!

栗原類

最初見たときは、演者と観客がお互いにマスクをするのが今の時代に合わせて作られていたのかと思いきや実は2015年に一度やっていた。
時代を先読むライゾマとイレブンプレイの皆さんのセンスが最強すぎた。
より多くの人に見て欲しい、今後もずっと続いて欲しい演目です。

近藤テツ

Media Artist ,Designer, Educator

制約された身体すらいつのまにか心地よくなり、何度も霧の中に迷い込んだり、引き戻される感覚に包まれました。ダンサーと鑑賞者、主体と客体、粒子と直線、平面と曲面、サウンドと次元の絶妙な調和が美しかったです。

四方 幸子

キュレーター, 批評家

1)オンライン(傍観者として)
まずオンラインでアクセスして感じたのは、オフラインでの当事者としての体験者の多重性である。WHILLに乗り動かされる受動的な「モノ」、同時にダンサーに絡まれる存在(対象or相手?)であり、同時に舞台装置の一部でもある。当事者から見れば、MRのめくるめく世界の只中にいる「作品観賞者」かつ「知覚する存在」であるだろう。
オンラインは、多視点的で表示を切り替える自由度があり、現場のMRとリアルや、ダンサーとWHILLで移動する体験者など、様々なボーダー侵犯の醍醐味が伝わってくる。しかし「外部観察者」「傍観者」というスタンスでしかない。


2)オフライン(当事者として)
翌日のオフラインでの体験は、圧倒的なものであった。
さまざまなボーダーが、これまでにない様態で創造的に接続・相互侵犯する(空間的、存在的、リアリティ[実空間とMR]、10分の体験の前後を含む時間軸...)!
現場でのパフォーマンスは実質10分だが、体験の前後も含め、全体のシークエンスが、身体的・心理的変容をともなう一つの「作品」であると感じた(荷物を預け説明を聞き、現場に移動、WHILLに座り機材を装着し、待機する間/終了後、装備を外し、客席に移動し次の回の準備と本番を見る流れ...)。

* Note: 実空間内の存在について。「オブジェ」と「ダンサー」、WHILL上の「体験者」は、生物や無生物、立場的に異なりながら類似している(プログラミングや振り付けというプログラミングで稼働)。モノも人間も同列的なものとして扱われる中、機械的な動きをするダンサーの身体性が浮上する。

3)「border 2021」全体について
構造的に見れば、まず「オンラインとオフライン」がある。オフラインでは、当事者体験(MRを駆使した世界、身体移動、時折りなされるダンサーからの不意の接触...)、その後の観客としての体験などの要素を持つ。またMR世界自体が、多層的な構造と展開を持っている。それにより、複層的な構造が領域侵犯的に関係していく、かつてない作品となった。

Rhizomatiksは、コロナ禍において、border初演以降の技術的進化をフルに取り込み、コンセプトにおいても大きな飛躍を遂げたと思う。

杉山 央

森ビル 新領域企画部

明晰夢の中にいるような時間だった。
空間が拡張され、仮想と現実とが重なりあった新しい世界。身体感覚さえも狂う。
心地よい仮想空間の中に、未来の都市を見た。
いま総合芸術の頂点にあるモノだ。

関根光才

映像作家, 映画監督

いまや希薄になった現実と非現実の境界は、このエポックメイキングな作品によってお互いに侵蝕し合う関係までになった。私たちがフィジカルに存在している理由がもうなくなってしまう世界の中で、残されたものは感情しかなかった。私たちはもしかしたら感情の塊みたいなものなのか?そんなことを考えさせられた強烈な体験でした。

空 音央

映画監督

今までAR・VRというメディアはあまりピンとこなかった。しかし、今回の「border 2021」を体験して少し考えが変わった。映画というメディアが誕生したばかりの頃、アトラクション感覚でその初期の映画を見ていた観客は、映画がここまで成熟したメディアに発展すると思っただろうか?AR・VRもそんな道を辿るのだろうか?そんなことを考えさせてくれた作品だった。

鈴木理

MAGNETICA studio

現実と虚像、自己と他者、現在と過去、さまざまなコントラストが重ねられたスリリングな体験でした。

谷本有香

Forbes JAPAN Web編集長

人間はかくも簡単に観念から解き放たれ、幻惑の世界に入り込むことができるものか。そして、かくも自由に、人間は身体も意思をも拡張することができるものか。
これまで見・経験してきたどのレイヤーにも属さない角度での未知なる感覚。
主体と客体が入れ替わりながら、非現実の世界の中に没入していく究極の変性意識状態を是非試してほしい。

照岡正樹

ルイ・パストゥール医学研究センター

borderは史上初の"生の"メディアアートです。
キーは中脳。中脳では視聴覚や平衡感覚などの情報が統合されていますが、その核が実は平衡感覚です。そこで身体の動かされ感と左右の眼で感じる情報に"ニューロ的な整合"が生じると「今の視覚情報は現実(生)だから"敬意を払う"よう」大脳に指示が行きます。
つまりborderの四方八方に流れる美しいCG、バーチャルのダンサー達は全てが"リアルで質感を持ち"、それらの中を"自らの身体や精神が漂う"という稀有な体験をさせていたいたわけで、非常に光栄に思います。

戸村朝子

主任研究員, ソニー株式会社

新しいオペラの原型の登場でした。物理空間が拡張し新たに生まれた現実空間に身体全体で没入。鑑賞者の目は点となり演出家の意図で自在に空間の中で動かされながらも、音楽を体全体で受け止めることで観客が身体性を失わずその場に居る当事者でいられる。多軸の構成だが決して鑑賞者を迷子にさせない。

内藤久幹

communication designer

人間とテクロジーの狭間に創造される新たな体認。リアルとバーチャルの境界を行き来する間に快楽と逃避の縁を走る。アートの新領域の始まりを確実に感じた。

西村真理子

株式会社 HEART CATCH ファウンダー

「ドラッグフリーなトリップ」 「この世界から抜け出したくない」 これが『border 2021』体験直後の感想だ。
ダンサー、可動式オブジェが待つ空間に、ゴーグルとヘッドフォンを着け自律走行車に乗って交わる。
自分の意思で動けないのに、自分が欲している世界に吸い込まれる恍惚。
夢の世界のようでありながら、現実のぬくもりがあり、自分の認知がハックされる恐れと快感を味わえる。
“感覚がハックされる体験”という最高級の嗜好品を多くの方に味わっていただきたい

野村達矢

ヒップランドミュージック アーティストプロデューサー

テクノロジーの進化には関心はするけど感動はしません。しかしこの「border 2021」はテクノロジーの進化を存分に感じながらも感動します!クリエイティブサイドの細心のこだわりを感じる優れた体験コンテンツだと思います。
現実→映像→ARを行き交う変幻や、自分の位置とダンサーやオブジェの位置の変幻、主観と客観の変幻、多彩な観点から感情を揺さぶられます。観た後にもっとこの世界に浸っていたいと感じる快感の余韻は体験しないと味わえません!

林 信行

フリーランス ジャーナリスト

可能と不可能のギリギリのborderにチャレンジした結果、その向こう側に、新しいフロンティア(世界)が拓けたのを感じた。素晴らしかった。
舞台セット、観客そして生身のダンサーの3つを完全に同期させ、これまでにない新しい体験を創り出したcutting edgeな公演。可能と不可能のギリギリのborderの向こう側に、新しいフロンティアが拓けたのを感じた。「生身のSF映画」とも言うべき公演のために、一人称視点で計算し尽くした振り付けも、それを完璧な精度で形にしたダンサーも素晴らしかった。

Victor Wang

Artistic Director and Chief Curator, M WOODS Museums

border 2021"は、オンラインで家は鑑賞するモノとは思えないような、多感覚・多視点の体験です。モノ、光、音、テクノロジー、そして振り付けが独自のブレンドで融合し、観客を魅了し、デジタルの無限の可能性でイマジネーションを包み込みます。

藤井直敬

Naotaka Fujii

前回のborderと今回のborderは体験のコンテンツとしてはあまり変わらない一方で、質は全く異なっていた。体験中は圧倒的な情報量で殴られ続けてクラクラし、体験後にはこれを誰よりも先んじて実現された悔しさで歯噛みした。現状制作可能な体験型コンテンツとしての極北であることは疑う余地がない。

borderという作品は、borderチームが提供したい体験コンテンツを、その時利用可能な最高の技術を利用して実現するというシンプルな戦略で作られている。

一般に情報と情報が結びつくと新しい予想しなかった価値が生まれる。そこで生まれる新しい価値や情報は、今まではデジタル空間内だけ、もしくは現実空間内だけで結びくことで生まれていた。それはデジタル空間と現実空間で情報が等価につながることが出来なかったからだ。しかしborder空間では違っていた。ここで言う等価とは、認知レベルで区別が出来ないこと、つまり認知的borderが無くなることで接続可能になるという意味である。

borderで示されるのは現実の新しい形と可能性である。あまりに当たり前で疑うことのない「現実」の中にはまだまだ多くの可能性が広がっている。

藤岡定

anno lab

現時点で考えうるVR/AR演出の最高峰でした。視覚・聴覚・触覚までがイマーシブに演出されていて、特にダンサーとリアルタイム3DCGのオクルージョンが完璧だったのが感動しました!

Benoit Palop

Freelance digital content strategist and project coordinator

RhizomatiksとELEVENPLAYのコラボレーションを体験するのは今回で3回目でした。discrete figuresも最高でしたが、border2021は予想以上でした。

2つの視点(2つのシナリオと2つのダンスパフォーマンスを意味します)から楽しめるのはborder2021の強みです。

体験パートはバランスの取れたVRとARを提供し、Narrativeとダンスパフォーマンスを強固なものにします。鑑賞パートに関しては、外からの視点を与えることで、作品を形作るあらゆる側面をよりよく理解することができます。

最後に、力強いサウンドとシアター演出がより没入感を与え作品をより強靭なものにします。

どのようにこのプロジェクトがオンライン体験にも拡張されていたのか今になって気になります。

朴正義

株式会社バスキュール 代表

border2021。5年の時を経て、さらにとんでもない領域に踏み込んでた。ライゾマティクスとELEVENPLAYが長年鍛え上げ、積み重ねた技術と経験がしっかり作品に組み込まれていることに感動するとともに、さらにその先を探究していく姿勢も感じて、心が震えました。言い換えれば、もし、この体験を逃していたら…と思うとゾッとするくらいです。

栁川典利

エイベックス・エンタテインメント

没入感というよりは浮遊感な感じで奥行きのすごい立体映像の世界とテクノミュージックが心地よい。
あぁ...もっとこの空間に居たい。って気分。
気持ちいいなぁ〜。。。映像綺麗だなぁ〜。
デジタル世界と現実世界とダンスが高次元で融合されてる新感覚な体験

山崎富美

ナイアンティック, マーケティングマネージャー

極上のARとVR・リアルとバーチャル・生身と幾何学・ダンスと演出・照明と映像・音楽と音がボーダーレスに融合した体験を楽しませて頂きました。視覚・聴覚・触覚・嗅覚の感覚すべてを使って「体感」する作品で、ものすごい没入感がありました。ダンス、テクノロジー、音楽、演出など、一つ一つの要素のクオリティが高く、それらが作品として組み合わさった完成形がとてつもない贅沢でリッチな体験を産み出していると感じました。今回は2日間だけでしたが、もっともっとたくさんの人に体験していただきたいです。ありがとうございました!